「作り直し」の募集は、たいてい2回目の発注
この案件は、いわゆる新規制作ではありませんでした。一度どこかへ発注し、納品も受け取っている。 それでももう一度募集がかかっている——そういう案件です。 伺った経緯は、前の外注先が生成AIに丸投げした成果物をそのまま納品し、 構成・校正・出典の保持と、社内で編集できる形という条件が満たされていなかった、というものでした。
お声がけは公募の形で、提案は43件集まったと伺っています。 その中で見られていたのは、作品の見栄えよりも「渡したあと、自分たちで手を入れられるか」のほうでした。
1回目の納品
受け取った直後
「見た目はきれいになっている」
↓ 半年後、数字を差し替えたい
- 図が画像で貼ってある
- 数字の出どころが書いていない
- 版が分かれて、どれが最新か分からない
直したい一行に手が届かない=
外に頼み直すしかない
→ 作り直しの再募集へ
作り直したもの
受け取った直後
「見た目はきれいになっている」
↓ 半年後、数字を差し替えたい
- 図はPowerPointの図形のまま
- 数字と引用に出どころが1行添えてある
- 担当者が開いて、その場で直せる
社内で手が入る=
資料が古びる速度が落ちる
図:受け取った直後の見え方は同じでも、半年後に自分で直せるかどうかが分かれます。
やったこと=見た目より先に、直せる形にした
お引き受けしたのは、18ページのリデザインです。作業そのものは、派手なことをしていません。
構成は人手で組み直しました。生成AIは下調べや言い換えの相談に使いますが、 並び順と、どの主張をどのページで言い切るかは人が決めています。 校正も人が通しました。数字と引用には、どの資料のどこから採ったのかを添えています。 出典が付いていれば、内容が正しいかを先方の社内で確かめられます。 とくに医療のように、書ける表現に線がある領域では、これは体裁の話ではありません。 出どころの書いていない一文は、誰が言ったのか分からないまま外に出ていきます。 出典の1行は、それを出す前に止められるかどうかの話です。
そしていちばん効いたのは、地味ですが編集しやすいPowerPointで納めたことでした。 図を画像に焼かず図形のまま置く。使った書体とパレットを揃えて、後から足すページが浮かないようにする。 納品物を「完成品」ではなく「続きを書ける台紙」として渡す、という考え方です。
結果
43件の提案の中からお選びいただき、検収まで完了しています。 取引完了時の相互評価は5項目ともいちばん高い評価をいただき、継続のご依頼もいただきました。 売上や商談数といった先方の事業成果は、こちらで測れる範囲を超えるため書きません。 確かなのは、次に直すときに、また外へ出さなくてよくなったということです。
発注する前に確かめる3つ
同じ作り直しを二度払わないための確認です。見積の前に聞くのが、いちばん安く済みます。
1
納品形式を、拡張子まで先に決める
「PDFで」なのか「編集できるPowerPointで」なのかは別の話です。図を画像で貼るのか図形で残すのかまで、発注時に文字にしておきます。
目安10分/材料=発注文の1行を足すだけ
2
数字と引用に、出どころを付けてもらう
後から確かめられない数字は、先方の社内確認でだいたい止まります。出典を書く前提にしておくと、そもそも根拠のない文が入りません。
目安10分/材料=同上。校正の手戻りが減ります
3
半年後に直す人を、いま決めておく
その人が開ける形かどうかが、実質的な合格条件です。決まっていないと、渡した瞬間から誰も触らない資料になります。
目安15分/材料=担当者の名前ひとつ
生成AIを使わない、という話ではありません。こちらも下調べや言い換えには使います。 分かれ目は、出てきたものを人が引き受け直しているかどうかです。 引き受け直していない資料は、受け取った側が引き受けることになり、それが二度目の発注になります。